土木一式工事

土木一式工事とは

土木一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。)をいいます。
複数の専門工事を含む大規模な工事で、具体的には、道路や橋、トンネル、ダム、堤防、港湾などの土木構造物の建設や改修、維持管理などを含んだ工事です。

ここでいう総合的な企画、指導、調整とは、元請業者が下請業者に対して行う業務の事を指し、下請工事を請け負う場合は一式工事には該当しません。

これらの工事は地域の発展やインフラ整備に重要な役割を果たし、安全性や持続可能性を確保するために高度な技術や専門知識が必要です。

土木一式工事に必要な許可

土木一式工事を請け負うには「土木工事業」の業種の許可が必要です。

一式工事は他の専門工事とは異なり、原則として元請業者の立場で総合的にマネージメントする事業者向けの業種です。

各専門工事についてはの自社で技術者を配置し施工するか、下請業者に専門工事の下請け契約を行い施工を依頼します。
500万円以上の契約は各専門工事の許可を受けた下請業者であることが必要となります。

土木工事業の許可を取得するための要件

許可を取得するための要件は以下のとおりです。

1 経営業務の管理を適正に行う能力があること

1-1 経営業務の管理責任者がいること

経営業務の管理を適正に行う能力があることの要件の一つとして、「経営業務の管理責任者として経験を有するもの」を置くことが求められます。


この「経営業務の管理責任者としての経験を有するもの」とは

  • 法人においては常勤の役員等
  • 個人においては事業主本人または支配人等

といった、営業取引上対外的に責任を有する地位にあり、さらに

  1. 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 建設業に関し、5年以上経管に準ずる地位にある者として、経営業務を管理した経験を有する者
  3. 建設業に関し、6年以上経管に準ずる地位にある者として、経管を補助する業務に従事した経験(補佐経験)を有する者

といった、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を持つ人です。

また、以下のD.E.に該当する常勤役員等は「補佐者」を置くことで要件を満たすことができます。

  1. 建設業に関する2年の役員等としての経験を含む、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者(建設業に関する財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者)
  2. 建設業に関する2年の役員等としての経験を含む、5年以上役員等(建設業以外を含む)としての経験を有する者

上記D.E.をの補佐者の要件は

  1. 建設業の財務管理の業務経験5年を有する者
  2. 建設業の労務管理の業務経験5年を有する者
  3. 建設業の業務運営の業務経験5年を有する者

上記のa~cは、1人が複数の業務経験を兼ねることができ、複数の業務を兼務していた期間は、それぞれの業務経験の期間として計算することも可能です。

1-2 適切な社会保険に加入していること

経営業務の管理を適正に行う能力があることのもう一つの要件は、「適切な社会保険」に加入していることです。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険など、加入が必要な「適切な社会保険」は以下の表の様に事業所の形態により異なります。

事業所常用労働者の数健康保険厚生年金保険雇用保険
法人1人以上
役員及び同居の親族のみ
個人事業主5人以上
1~4人
事業主及び同居の親族のみ

〇:加入義務あり

健康保険について

健康保険は次のいずれかに加入します。

  1. 協会けんぽ
  2. 組合管掌健康保険
  3. 建設国保等の職域国保
雇用保険について

従業員を1人でも雇用している場合は事業者に加入の義務があります。

2 専任技術者を営業所ごとに置いていること

営業所ごとに専任技術者を配置する必要があります。
土木一式工事の専任技術者は、次のいずれかの要件を満たしていなければなりません。

2-1 資格を取得している

土木工事業に関する下記の資格を取得していること。

試験等資格証明書類一般特定
建設業法「技術検定」一級建設機械施工技士合格証書
二級建設機械施工技士(第1種~第6種)* 
一級土木施工管理技士
二級土木施工管理技士(土木)* 
技術士法「技術士試験」建設総合技術監理登録証
建設「鋼構造及びコンクリート」総合技術監理
農業「農業土木」総合技術監理
水産「水産土木」総合技術監理
森林「森林土木」総合技術監理

2-2 指定学科を卒業し、土木一式工事業の実務経験がある

以下の指定学科を卒業し、①または②の実務経験があること。

指定学科:土木工学、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科
①高校(旧実業学校を含む。)を卒業した後、5年以上の実務経験を有する者
②大学(高等専門学校、旧専門学校含む。)を卒業した後、3年以上実務経験を有する者

2-3 実務経験が10年以上ある

土木一式工事業に関しての10年以上の実務経験があること。

3 財産的基礎があること

一般建設業の許可の場合

以下の①②③のいずれかに該当すること

① 自己資本の額が500万円以上であること
② 500 万円以上の資金調達能力のあること
③ 許可取得後5年間の営業実績のあること

特定建設業の許可

直前の決算において下記の①②③の要件すべてに該当すること

① 欠損の額が資本金の 20%を超えないこと
② 流動比率が 75%以上であること
③ 資本金が 2,000 万円以上であり、かつ、自己資本が 4,000 万円以上であること

その他にも誠実性の要件や、欠格事由に該当しないことなどが求められます。

滝沢行政書士事務所 代表行政書士

滝沢 卓

2018年 滝沢行政書士事務所開業
神奈川県行政書士会所属